Machinakaの日記

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映画「エール!」ネタバレあり感想解説と評価 今年ベストのドラマ映画決定! 思春期の子と親との意思疎通を描いた傑作!

はい、こんばんは。 Machinakaです。

 

今回批評するのはこの映画!!

 

 

「エール! / la famille bélier」

 

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エール!(字幕版)

エール!(字幕版)

  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 

はい、テレビCMも少なかったと思うので、今一度予告をどうぞ!

 


映画『エール!』予告編 - YouTube

 

はい、本国フランスでは4週連続で興行収入No.1を記録している話題作。ついに日本に上陸してまいりました!!

 

タイトルはフランス語で la famille bélier です。日本語に訳すと、ベリエの家族。ベリエとは、主人公の女の子の名前です。それにしてもなぜ、エールなんてタイトルを付けたのでしょうか。。。

 

公開館がそこまで多くないため、まだ認知度は高くないかもしれません。情報が少なく、調べるのに苦労しました。。。

 

本作は既に多くのネットニュースで記事にされており、閲覧する人も少ないので記事にするか悩んでいましたが、、、

まだまだこの映画の魅力がアピールできてないよ!!

というわけで、筆を取ることにしました。

 

詳しいあらすじは予告でご覧になってください。

 

 

 

こんなに泣いた映画は久しぶり!

Machinakaは映画に関しては非常に涙もろいです。色んな映画で涙を流してきましたが、、、この映画に関しては、、、

 

声を出してガチ泣きしました笑

 

最前列で鑑賞したため周りの観客に影響はないと思いますが、、、あまりに感動して嗚咽してしまいました。。。。

 

しかし、映画の鑑賞後明かりが付いた瞬間、周りの観客もガチ泣きしているのが分かりました笑

 

他の観客と鼻と涙をすすりながら劇場を後にするという、なんとも珍しい映画体験ができました。

 

3Dど◯えもんみたいにワザとらしい泣き場所を作っているのではありません。演出が最小限に抑えられた、とても自然な映画です。しかし、泣かずにはいられませんでした。。。。

 

大泣きできる映画=傑作かどうかは分かりません。

しかし、この映画は私の心の琴線に触れたのです。映画を見る前と後で自分にここまで影響を与える映画はそうありません。

 

暫定ですが、ドラマ系の映画では今年No.1かと思います。

 

 

メインテーマは「思春期の子と親との意思疎通」

"「家族」がメインテーマです。"

"「親元からの旅立ち」がメインテーマです。"

いろんなサイトで、こんな表現を目にします。しかしこれらは表面的なテーマを抽出したにすぎず、Machinaka的には

思春期の子と親との意思疎通

と考えています。

 

あらすじ&キャラ設定を簡単に書きますと、、、

 

・主人公のベリエは両親と弟の4人家族。家族は片田舎で農業を営む。

・ベリエ以外は耳が聞こえず、日常会話から仕事の話まで、家族全員の通訳を一人でこなしている。

・そんな彼女には歌の才能があり、教師から遠く離れたパリの音楽学校への進学を勧められる。

・もちろん親は猛反対。ベリエと両親の間で大喧嘩が起きてしまう。

・家族のために田舎に留まるか、都会へ行き自分の夢を叶えるか。彼女が下した決断とは、、、、?

 

家族の大喧嘩が、この映画で重要なキーになります。

 

 

なぜベリエ以外の家族は耳が聞こえない設定?

あらすじにも書きましたが、家族は主人公の女の子以外、耳が聞こえません。どう考えても妙な設定ですね。

ただ感動を増幅させるために、ろうあ者を増やしたのか。否、そんなことはありません。

 

ベリエは歌うことが好きで、実は音楽学校の興味を持っていました。それに家族が大反対し、喧嘩してしまいます。

普通だったら、自分の夢を家族が簡単に応援なんてしてくれないですよね? しかも家を出ることになればなおさらです。 子どものことを想ってこそ、厳しいことを言ったり引き留める行動をするのは当然の反応。

 

そこで、子どもと親とで意思疎通が困難になってしまいます。

 

思春期の子どもの主張は親には届かない。

 

これは世の常です。そんな普遍的なテーマに対して、この映画は、、、、

 

家族とのコミュニケーションに手話を挟むことで、家族の仲の良さ・あるいは悪さを全て手話で表現しています。

 

そもそもこの映画では、最初から完璧に通訳を出来ている訳ではありません。

家族の仲が良いときは、フレンドリーに適切な通訳を買ってでるベリエ。

しかし、大喧嘩の後は彼女の手話通訳は超適当に。。。

末期の時は、伝えたいことの10%くらいしか訳しません。

 

父は「代わりの通訳を探してこい!!」と怒鳴りつけるジェスチャーをする始末。

 

なんで家族はそこまで娘の音楽学校に反対なのでしょうか??? 先生から推薦をもらって、将来を有望されているのは明白なことなのに、、、、なぜ??

 

 

耳が聞こえないから、彼女の歌声は家族には届かないんですよ!!

娘の実力を自分で確かめることが出来ないから、不安でしょうがないんですよ!!

 

こんな不幸なことってあるでしょうか。そりゃあ家族も不安になって大反対します。ここまで辛い設定にすることで、意思疎通の困難さがより強調されている脚本になっているのです。

耳が聞こえない親の娘の夢が歌手。恐ろしい脚本を作ったものです。

 

 

本当のメインテーマは何かは観客のみなさんにゆだねられますが、こういう映画の見方をすることで、キャラクターやストーリーの設定の斬新さや凄さが分かって頂けたら幸いです。

あー、こんなの2◯時間テレビにはできっこないか。。。

 

 

 

単なる観客ではなくなる演出

 

後半にはメインテーマを露呈するような演出があります。それは

 

耳が聞こえない状況を体験させられる

 

娘が学校の発表会で歌う一コマ。娘は元気よく歌い、観客からは拍手が、、、、 そりゃあそうです。

娘のベリエを演じたルアンヌ・エメラは本物の歌手なんです。

  

色んなブログで書かれていますが、世界的に有名な音楽オーディション番組「The Voice」で、審査員全員に絶賛されたほど!!!

 


Louane Emera - The Voice (Audition) - YouTube

 

余談になりますけど、ピッチパーフェクト2でこの番組がエンディングロールに流れていましたね! しかも個人的に大好きなAdam Devineさんの歌で!!

 

これはパロディなので観ても観なくてもどっちでも良いです笑

 

 

しかし、両親は娘の歌がどれだけ凄いのか感じることができずにしかめっ面。

 

その瞬間、映画館が急に無音になります。

 

そこから歌い終わるまで、約1分ほどの長い間、ひたすら無音の状態が続きます。普通なら数秒程度でも十分なのに、異常に長い時間無音になってしまい、観客は驚き、そしてこの映画の真の意味を知ることになるでしょう。

 

そう、これは家族の難聴を表現するための演出なんです。

 

セリフ回しや字面からも難聴の辛さは伝わってきます。しかし、実際に映画館で難聴を体感させられたら、、、、  

もう我々はただの観客ではなく、映画の参加者なんだと認識させられました。

 

 

ラストシーンにはハンカチ2枚持ってけ!!

さて、ここまで来ると本作のメインテーマも分かり、難聴の親の辛さも分かってきたと思います。

 

 

ラストシーンではパリに出向いて音楽学校のオーディションを受けるのですが、家族の観ている前でまたもや歌を披露します。

 

「おいちょっと待て。家族は難聴なんだから、どんだけ美声でも伝わらないんだって! さっき学校のシーンで俺たちに見せつけたじゃねぇか!」

とMachinakaは突っ込んでしまいましたが、、、、

 

しかし、ベリエは考えていました。

 

なんと!歌詞を手話に翻訳し」ながら歌うのです。」

 

これにより、

ベリエと家族は本当の「意思疎通」が出来るのです!!! 

注意:ネタバレ禁止のため「 」内は白塗りにしています。 ネタバレOKでしたらマウスでドラッグして頂くか、別の場所にコピペすれば観れます。

 

 

 

 

 

 

 

やっとベリエの言いたいことが伝わった。よかったねベリエ。。。。そしてよかったね、家族。。。。。

 

もう、涙でスクリーンが見えねぇよ。。。。。

 

 

 

 

楽曲が完璧

 

歌った歌は、フランスのMichel Saradouの 「Je Vole」という曲。

 


Michel Sardou - Je Vole - 1983 - YouTube

 

この歌の冒頭。サビ部分の歌詞に大きなメッセージが隠されています。

 

Mes chers parents, je pars 

大好きなパパとママ、私は旅立つわ

Je vous aime mais je pars 

ふたりとも大好きだけど、旅立つの

Vous n'aurez plus d'enfant Ce soir

もうパパとママの子どもはいないの

Je n'm'enfuis pas je vole

今夜逃げるのではなく、飛び立つの

Comprenez bien, je vole

わかってください、飛び立つのです

 

Sans fumée, sans alcool Je vole, je vole

タバコもお酒もやらず、飛び立つのです

 

これを読んだら分かる通り、音楽学校に旅立ちたいベリエの心情を代弁しているのです!!

 

もともと脚本のVictoria氏がこの音楽を聞いてストーリーを作ったというのですから、本作で最も大事な楽曲なんでしょう。

 

ベリエの歌唱力と、ストーリーに沿った歌詞のダブルパンチを食らい、本作の見せ場となるシーンに仕上がっています。 

 

What a sence of wonder  !!!!

 

しかし、この「Je Vole」という曲。

Michel Saradouが歌った原曲から、大きく改変しています!!!

 

IMDBでは若干変更したとありますが、全然違うよ!!

 

なんと原曲では、Michel本人が10代の頃に感じた自殺願望をベースに曲を作ったそうなんです!

 

よく歌詞を見て下さい。 

・飛び立つ→居なくなる→この世からいなくなってしまう 

・酒もタバコもやらずに飛び立つ→10代のまま生涯を終えることが決定している

 

よくよく見ればとても恐ろしく悲しい歌詞です。しかし、この悲痛な叫びをエンディングに持っていきアレンジを加えることで、ベリエの想いを飛び立たせることが出来ました。

 

 

この映画と出会えたことに感謝

設定が複雑でありストーリーも重厚なため、解説をすると大変長くなってしまいました。。。。

 

いま公開されている映画の中で、一番泣けます! 心に刺さります! 

 

あんまり使いたくない表現だけど、、、、

 

とにかくヤベぇ。。。。

 

超超超超超超、ウルトラ、メガマックス、アルティメット、オススメです!!!!!!!!!!!!!

 

早く映画館に走れ!!!!!!!!

 

 

 

その他トリビア

 

ベリエの弟を演じたLuca Gelbergさんは、演技ではなく本当の聴覚障害者です。

 

  

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ですので、この子だけはベリエの最後の歌声も実際には届いていないのです。それを考えると、聴覚障害って本当に辛い。。。。以下を観て頂ければ本当に障害を持っていることが分かります。

 

www.canalplus.fr

 

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