Machinakaの日記

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アート映画の皮を被った、むき出しの社会派ディストピアSF映画 園子温作品「ひそひそ星」

 

こんばんは! machinakaです。

 

今回批評するのはコチラ

 

「ひそひそ星」

 

 

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はい、私のブログで園子温作品を扱うのはこれが初めてかもしれませんね。

 

園子温監督が20代の頃に考えた脚本を元に作られたSF映画になってます。

 

 

 

1. とにかく予告を見てみよう

 

 


園子温監督作/映画『ひそひそ星』予告編

 

 

 

モノクローム、奇妙な宇宙船、奇妙な影絵。

 

どう考えてもアート映画のようにしか見えませんね。

 

カラフルで過激な映画ばかり撮るイメージの園子温監督が、こんなに静かな映画を撮るなんて、意外だと思った方もいらっしゃるでしょう。

 

エピソード

未来の宇宙が舞台になっていて、人類は機械に支配されてしまう。人間の数は激減し、宇宙では人間が絶滅危惧種になるだろうと議論されている。

主人公は、人間に郵便物を配達するアンドロイド。様々な惑星に住む人間に

 

 

 2.監督とキャスト

 

監督、脚本、製作は園子温さん、主演の鈴木洋子を演じるのは神楽坂恵さん。

実はこの2人、夫婦です。

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 園子温ファンならご存知でしょうが、園子温さんの近年の作品は、ほとんど神楽坂恵さんが主演又は出演してます。

 

個人的な経験則ですが、妻と一緒に作る映画は面白い!!

 

ジョージルーカスの妻は編集の神様、旧三部作は彼女の功績

ジョージミラーの妻も、マッドマックス怒りのデスロードでアカデミー編集賞を受賞。

 

 

神楽坂恵さんは編集者ではありませんが、妖艶な演技や本作の様なミステリアスな女性も演じ、非常に幅の広い女優さんだと思います。

女優と同時に妻でもあるので、色々お願いしやすいんでしょうね。

まるで別人ですよね、神楽坂恵さん。

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園子温さんのフィルモグラフィーは、非常に多岐に渡ります。

 

インド映画もびっくりの上映時間の長さで話題になった、「愛のむきだし」

 

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染谷将太、二階堂ふみさんを世に出した「ヒミズ」

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今作と非常に関係ある「希望の国」

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また、商業映画としてリアル鬼ごっこなどの映画も作ってます。

 

 

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http://getnews.jp/img/archives/2015/04/b10a029c85c987313c242b95856b39c2.jpg

 

彼の作風は、面白い面白くないに限らず色んな映画を作りまくる多作の三池崇、良い意味でも悪い意味でもエグくてトラウマを残すキム・ギドクを足して二で割ったようなイメージ。

 

 

ちなみに、私が一番トラウマを受けてるのは、こちらの映画。

 

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最近これに関連した事故がニュースになってましたけど。

 

 

 

 

 

3.映画全体の批評

 

 

アート映画だと思ったら、日本人なら誰でも分かる強烈な社会派作品だった!!

 

非常に見応えのある映画でした。そして、未体験の映画でもありました。

 

もう予告でもメディアでも言ってるんで大丈夫だと思いますけど、この映画は「東日本大震災」をテーマにしてるんですね。

 

まず映画冒頭に、テロップに「協力」の文字が。

そこには、福島原発がある浪江町を筆頭に、東日本大震災で被害を受けた町の名前、そして「仮設住宅の住民の方」など、最初から震災を強く意識させるような、あまりにも明確なメッセージを与えています。

 

もちろん、純粋に考えれば、長きに渡る取材やロケの協力に対する感謝が先頭に来たのかもしれませんけど。でも、普通ならエンドロールにちょこっと出てくるだけの「協力」が、ここまで強烈だとは。。。

 

そして、主人公は人類に郵便を届けるために様々な惑星に行くのですが、そこの風景が原発によって立ち入り禁止区域となった町そのまんまなんですね。

途中、福島原発なんじゃないかと思われる施設で撮影していたりしてました。

 

 

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http://www.47news.jp/photo/47photo/images/2012/20120118TRIMG_0014200001.jpg

 

 

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http://livedoor.blogimg.jp/ukedo311/imgs/e/6/e64f3403.jpg

 

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こういった風景が、モノクロになって映画に出てくるんです。

 

 

 

特筆すべきなのは、立ち入り禁止区域の映像がニュースやドキュメンタリーではなく劇映画として映っている点なんです。

 

某公共放送などで色んな被災地の映像を見たことがあると思いますけど、こんな映像は絶対に作れませんよ。だって、劇映画で被災地の映像を使ったら、下手したら批判をくらいますよ。

 

園子温さんが、震災直後から取材と復興への協力を地道に続け、住民の信頼を得た結果だと思います。園子温さん以外はできない映画だと。

 

今は熊本地震のニュースによって、東日本大震災の情報が埋もれ、風化していく現代。その風化を止めるためにも、この映画は意義深いものだと思いました。

 

 

 

 

 

4.メタファーの考察

 

ここからはネタバレしますので、ご注意を!!

 

この映画で伝えているテーマは明快だと思うんですけど、細かいメタファーがあって、理解するのは大変なんじゃないかと思われます。あくまでも考察ですけど、思いつくままにメタファーを説明していきます。

 

 

・過度な洗濯は作業着の除染のメタファー?

宇宙船は、とにかく不思議な空間でしたね。宇宙船というSF設定にもってこいのガジェットなのに、室内は昭和に作られたような古臭い家具。

私が一番気になったのは、洗濯機を回すシーン。よく見てれば分かるんですが、惑星で仕事が終わった直後に洗濯機を回してるんですね。

 

これはおそらく、放射線量を減らすために作業着を洗っている象徴だと思うんですね。

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http://www.kahoku.co.jp/img/news/201510/20151006_059002jc.jpg

 

だって、劇中で執拗に何回も作業着を洗うじゃないですか? 普通ならあんなシーンはカットですよ。

 

 

・なぜ30デシベル以上出ると人が死ぬ設定に?

 

一つの考察に過ぎませんが、おそらく「デシベル」と「ベクレル」を掛けてるんじゃないでしょうか。

 

「ベクレル」「シーベルト」など、放射線の強さを表す単位って、日本人なら何回も耳にしてますよね? 震災直後、何度この単位を聞いたか、、、

 

「30デシベル以上出すと人類は死ぬ恐れがあります。」

機械が警告しますよね。そこで主人公の神楽坂恵さんは、デシベルを測る装置を使って音を調整してますね。

このシーンを見て、「まるで放射線の強さを測ってるようだ」と思ってしまいました。

「ベクレル」と「デシベル」って音が似てますし、可能性高いんじゃないかと思います。つまり、音の大きさ「デシベル」を使って、放射能のレベルを表すベクレルを示唆してるのではないかと思うんです。

 

以上です。 

 

 

 

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