Machinakaの日記

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見事なまでの映画的文法 いつまでも男と女は恋に溺れる 「さざなみ」批評

おはようございます! Machinakaです!

 

今回批評するのはこちらの映画

 

 

 

 

 

「さざなみ」

 

 

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はい、今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシャーロット・ランプリング主演の映画です。

 

以前「キャロル」の批評をした時に、色で映画を考察した記事を書いたのですが、その記事を読んだ方からこの映画を見て欲しいとリクエストがあったんですね。

 

 

 

www.machinaka-movie-review.com

 

 

この「さざなみ」も色彩計画が素晴らしいとの触れ込みだったので、鑑賞してまいりました!!

 

 

 

 

 

 

1. あらすじ

 

 

 

www.youtube.com

 

長年連れ添った夫婦の関係が1通の手紙によって揺らいでいく様子を通し、男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いを浮かび上がらせていく人間ドラマ。結婚45周年を祝うパーティを土曜日に控え、準備に追われていた熟年夫婦ジェフとケイト。ところがその週の月曜日、彼らのもとに1通の手紙が届く。それは、50年前に氷山で行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたというものだった。その時からジェフは過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせていく。「スイミング・プール」のシャーロット・ランプリングと「カルテット!人生のオペラハウス」のトム・コートネイが夫婦の心の機微を繊細に演じ、第65回ベルリン国際映画祭で主演男優賞と主演女優賞をそろって受賞した。

https://eiga.com/movie/83915/

 

 

2.キャスト

 

 

主演はシャーロット・ランプリングさん

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今年で70歳になるイギリスの大ベテラン女優さんです。

 

昔はモデルのお仕事もしていたみたいで、下の写真は1974年の頃の女性誌。

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若い頃も、めちゃくちゃ美人なんですーー!!

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映画「愛の嵐」では過激な衣装、、、というかほとんど裸の衣装が観客に衝撃を与えたそうです。

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そして、彼女の夫を務めるのはトム・コートネイ

 

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今ではいいおじいさんですけど、昔のお姿はコチラ。イケメンのイギリス俳優さんですー。ちなみに、「長距離ランナーの孤独」の画像です。

 

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3.映画の感想

 

見事なまでの映画的文法で、男女のあるあるを描いた傑作だと思いました。

 

いつまでも男は昔の女の影を引きづる。女は昔より今を大切に行きたい。

 

今回は映画のプロットが良くできていると思いましたね。

 

・70歳になるおばあちゃんとおじいちゃんの夫婦。結婚45周年の記念式を直前に控える中、ある手紙がおじいちゃんに届く。そこには50年前に付き合っていた彼女が、凍結された状態で遺体になっていた。

 

・おばあちゃんもその彼女のことは知っていた。しかし、おじいちゃんと彼女の関係が徐々に明らかになっていく。彼女は既に他界しているが、凍結しているので50年前と同じ容姿のままで保存されているという。ちなみに、彼女は27歳で他界した。

 

・おじいちゃんは、遺体になった彼女に会いに行きたいと申し入れるが、おばあちゃんの表情は硬い。←ここがミソ

 

一つの手紙をきっかけに壊れていく夫婦を通して、男と女の恋愛観の違いを描いています。

 

余談ですけども、映画のプロットが似ている映画として、同じイギリス(スコットランド)映画で「Sunshine on Leith」という映画がありました。確かあれは、銀婚式で夫の隠し子が発覚するという話でしたw

 

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4.見事なまでの映画的文法

 

配色の素晴らしさは後で説明するとして、、、

 

この映画は、セリフでストーリーを伝えない、映画的に素晴らしい造りとなっていました。

基本的には会話劇が多い地味な映画なんですが、それを補うかのように多くの粋な演出がありました。

 

・視線の演技

シャーロットランプリングの目の演技が絶品でしたね。彼女は役柄では夫を献身的に支える見事な妻を演じています。夫がどんなに酷いことを言っても、優しい言葉をかけるばかり。でも、顔は全然笑ってないんですよね笑 特に目が怖い!! そういう女性って結構いると思うんですが笑

 

 

 

 

・犬の散歩が毎回出てきた意味とは?

 

この映画は、非常に規則的な時系列に沿って作られているんですね。

45周年の記念パーティーの数日前を舞台にしているんですが、1日の始まりから終わりまでをカットしないで丁寧過ぎるまでに描いてるんです。それを象徴するかのように、ちゃんと「月曜日」「火曜日」ってワンカット入れるんですよね。

 

例えば、シャーロットの1日の始まりは犬の散歩なんですけども、毎日毎日、犬との散歩のカットが入るんですよ。

 

よく見れば分かると思うんですけど、同じ犬の散歩でも毎回内容が違うんですよね。

初日は最初から一緒に犬と歩いてるんですけど、日が変わるたびに犬との距離がどんどん遠くなってるんです。そして決定的なシーンは、シャーロットが夫の隠し部屋に上がって、50年前に付き合っていた女性の写真を見に行くところですけど、

 

犬が

「ワンワン!!!!」 

「ワン!!」

 

って過剰に吠えるんですよ。

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これでお分かりかと思うんですが、夫を犬に投影しているんですね。犬との散歩のシーンも、妻と夫の距離感を象徴してるんですよ。

だから初日はあんなに仲よかったのに、後半では犬を呼んでも来なくなる仕組みにしてるんですね。

 

つまり、直接セリフで伝えなくても、日常の微妙な変化から夫婦の仲を描いているんです。こういう映画の作り方で真っ先に思いついたのは、カンヌ映画祭のある視点部門で賞を取った「フレンチアルプスで起きたこと」の歯磨きのシーン。

 

この映画も、毎日毎日歯磨きのシーンをわざわざ入れるんですよね。これで妻と夫との距離感を表すっていう。

 

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フレンチアルプスで起きたこと [DVD]

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・音楽の使い方

 

最近流行りなんじゃないかと思うんですけど、既存の曲からストーリーを伝える演出が多用されていますね。あまりにも多くて書ききれないんですが、代表的なものを。

 


Young Girl - Gary Puckett And The Union Gap

 

この音楽が、車を運転している時にラジオから流れてくるんですけど、「君は僕には若すぎる!」「僕の心から出て行ってくれ!」というメッセージが込められてるんです。

 

これって、凍結された彼女のことを想う夫の心情と重なりませんか?

 

妻からしたら、夫のこんな感情なんて聞きたくない! そう思ってラジオを止めちゃうんですよね笑

 

 

 

 

 5.カラー映画としての見方

 

 

結構配色に気をつけて見ていたんですけど、この映画は統一感がとても美しいと思いました。特に感じたのは「壁」との統一感。

シャーロットの着ている服と壁の色が一緒なんですね。この映画は基本的に室内でのシーンが多いですから、壁との統一感を目指したのかもしれません。

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あとは、妻と夫の服。

仲の良い時は、ずっとペアルックみたいに同じ色の服を着ていました。黒なら黒、白なら白と、同じ色ばかり着ているんですよね。

決定的だったのは、寝巻きのTシャツ。二人ともグレーのTシャツを着ていて、どれだけ仲良いんだよってw

でも、それも最初だけでしたけどねー笑

 

また、こちらの方がおっしゃる通り、シャーロットランプリングのカラーは青でしたね。

 

https://modernlovex.hatenablog.com/entry/2016/04/29/192341

 

青って冷静とか落ち着きを与える色ですけど、シャーロットは見た目はすごく落ち着いてるんですけど、表情とか細部を見ていくと怒っているので、そこが見ていて面白かったです。

 

 

というわけで、セリフで伝えずに映画的文法で伝える素晴らしい映画でした。

 

 

オススメです!

 

 

 

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