Machinakaの日記

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赤が多用される意味とは? 補色が織りなす圧倒的な映像美に酔いしれて! 「キャロル / CAROL」批評番外編

 

 

 

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こんばんは! Machinakaです。

 

今回はキャロル批評番外編ということで、映画に隠された配色ルールについて書きたいと思います。

 

多くの映画感想を見ていると、「この映画は美しかった」と賞賛の声が上がっています。

しかし、具体的に何が美しかったとか、どんなテクニックを使ったのかは書いてる記事はありません。

 

たかが配色と侮ることなかれ! 実は色に隠された、重要なメッセージが隠されているのです。

 

 

 

 

まだ本筋の批評をご覧でない方は、まずはこちらをご覧ください。

 

 

www.machinaka-movie-review.com

 

映画キャロルを見た後、しばらく立ち上がれませんでした。とにかく私は青緑に取りつかれました。

 

多分言っている意味がわからないと思いますけど、このブログを最後まで読んで、映画における配色ルールをご理解頂けたら、私の言っていることがわかると思います。

 

ここからは、意識が朦朧とする中、帰りの電車にて、映画の配色ルールについて書いたものをそのまま載せます。いつもは「です。」「ます。」口調なんですけど、そのままメモ帳に書いたものを貼り付けます。なぜならこういう直感的な感想は、映画を見た直後に書いたものに勝るものはないからです。

 

ただし、ところどころに画像を挿入しています。

 

 

 

それでは行きます。

 

 

 

映画鑑賞して30分後くらいの感想

 

 

キャロルは、テレーズは青緑の服から始まる
赤色青緑が際立ち、他の色の彩度は低く、モノクロみたい。

アメリカ人の髪色の金と合わせて、クリスマスの色を表していると思われる。

 

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赤色・金色以外は一切の色を押さえた配色。異様としか言いようがない。テレーズのベストが黒で、モノクロ調にしているのが極め付けだ。

 

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これもデパートの1シーン。注目は画面左上の「TOYS」」の色使い。両端の黄色に挟まれた赤色青緑の色にあなたは気づいただろうか?

 

クリスマスは、2人が出会った大事な時期であるし、日常生活から解放された華々しい日々を切り取っているとも言える。

 

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しかし、交互に2人の着ている服は入れ替わる。
キャロルが青緑、テレーズがになることもある。

 

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キャロルの青緑のコスチューム

 

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テレーズの青緑のコスチューム

 

 


キャロルのテーマカラーは、テレーズは青緑だ。映画後半で、キャロルのとの恋仲はすっかり覚め、自分の世界だけで生きていこうとする。この時テレーズが自宅を青緑で染めているシーンがある。テレーズのテーマカラーが決定されると同時に、色に意図的にメッセージを込めている裏付けでもある。

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ペンキを塗っている途中で分かりづらいが、テレーズが塗っている色は間違いなく明るい青緑の色だ。この映像に赤色は一切なく、キャロルの残り香の一切を感じさせない。


映画の大半は旅行しているため、服は数着しか持ってないところも、脚本の妙である。
服は青緑だけだが、それがワンシーンで被ることはない。これにより、美しいコントラストが際立つ。

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なぜ赤と青緑が重ならないのかは、後で解説する。

 

恐ろしいのは色の統一感。服だけでなく、壁やカーテン、ベッドのシーツなど、ありとあらゆるものが服と同じ色の赤と緑で構成される。
青緑を基調とした美術の徹底により、画面が色で分割されるシーンには圧倒される。

 

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キャロルとテレーズが同居するホテルの一室。赤色であるキャロルの周辺には赤が集中しているが、壁はテレーズの青緑色に包まれている。お酒を煽って一人寂しい画にも見えるが、配色ルールを知っていれば、実はテレーズが後ろから見守っているとも読み取れる。

 

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こちらもホテルの一室。キャロルが映る一方で画面の大半は青緑で構成されている。驚いたのは、絵画まで青緑の色調に沿っていることだ(海と空は青緑の色と近い)こりゃあ間違いなくアカデミー賞は取るであろうと確信した1シーンであった。



単に統一感とか美しさの演出だけでなく、色により焦点が絞られており、注視点を示してくれる。また、赤と緑以外はボカシがきつく設定されており、否が応でも指定された色に注目せざるを得ない。つまり、キャロルとテリーズ以外感情移入できない作りとなっている。
この撮影方法は、同じく本年度アカデミー外国語映画賞にノミネートされたサウルの息子を思い出させる。

 

www.machinaka-movie-review.com

 

 


デジタル技術の発達により、どんな色でもどんな画質でも表現できるようになった。しかし本作は1950年の映画技術に逆行し、撮影技術が制限されているからこその美しさを見事に抽出した。
もしかしたら当時の撮影技術の制約が、1950年のLGBTに対する偏見の厳しさ、肩身の狭さに投影されていたのかもしれない。

 

 

  • 赤と青緑の配色ルールには色彩学に基づいた理由があった!?

 

 

青緑。どう見ても似たような色には見えませんよね。単純に考えれば、キャロルとテレーズを差別化するために、いかにも対照的な色に指定したようにも感じます。

 

しかし反対の色であれば、単純に

であればいいでしょう?

 

ではなぜ青緑

で衣装を分けたのか。

 

これはあくまでもMachinakaの考察ですが、、、

 

「補色」のテクニックを使った色彩の強調表現なのではないかと思うのです。

 

「補色」とは何でしょうか?

 

まずはこちらの図をご覧ください。

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https://www.tagindex.com/color/color_wheel.html

 

単純な色相環図ですね。

一言で説明すれば、任意の色の対角線上にある色が、その色の補色になります。

図に六芒星のような線がありますけど、これが対角線だと思ってください。もっと簡単に言えば、任意の色から最も遠い距離のある色が、補色になります。

 

で、補色の効果って何なのかってことなんですけど、

引用させていただきます!

 

補色とは簡単に言えば『反対色』の事です。 反対の色なのでお互いがお互いを際立たせて、より一層『その色』に見せる効果があり、コントラスト比が一番高くなる組み合わせとも言い換えられます。 例えば、『赤⇔青緑』、『黄⇔青紫』、『緑⇔赤紫』などは代表的な補色の関係にあります。

 

つまり、補色のテクニックを使えば、2つの色をより強調させることが可能になるのです。

 

 

以下のサイトで補色を検索できるので、早速赤色の補色を探してみましょう!!!

https://eelife.org/COLOR/hosyoku.html

 

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赤色の補色は、青緑色でした。この赤色は原色なので、実際の映画に出てきた色から補色を出してみましょう。

 

 

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https://realsound.jp/movie/images/20151028-carol02.jpg

 

16進法で表現されているので分かりづらいですが、赤色には間違いありません。

 

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これでもうお分かりですね?

 

・キャロルとテレーズの色は「補色」により構成されていた。

 

・「補色」は一つの色を決めないと出せない。映画宣伝でしきりに赤が使われていることを考えると、「赤色」が先行して「青緑」という補色が決められた。

 

 

 

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https://entertainment.rakuten.co.jp/movie/special/carol/img/img-main.jpg

 

 

絵画ならあるかもしれませんけど、何と映画で補色表現をやるなんて、正気の沙汰ではありません。褒めてますよ。

 

もちろんCGは使っていませんし、青緑の服と美術品をせっせと集めてしかるべき位置に配置し、しかるべき撮影をして、絶妙な配色ルールが厳重に敷かれているのです。

 

アカデミー賞ですけど、コスチュームデザイン賞は確実かと思います。

 

最後までお読みいただいて、ありがとうございました!!!

 

 

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