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映画「殺されたミンジュ」ネタバレあり感想解説と評価 R−18! キム・ギドグ監督!

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この記事では、「殺されたミンジュ」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

今日は3回目の映画批評になります。

 

溜め込んでいたことを後悔してます。映画を見ることには後悔してないんですけどね。

 

 

さぁ、今回批評するのはこちらの映画!!!

 

 

 

「殺されたミンジュ / One on One」

 

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まずは予告をどうぞ!!

 


映画『殺されたミンジュ』予告篇

 

カンヌ・ベルリン・ヴェネチアと3大映画祭を制した鬼才キム・ギドグ。監督の名前くらいは、誰でも知っているのではないでしょうか。

 

 

ここ最近は、製作する映画の数がおかしい。

2013ー2014年の間に監督・脚本を務めた作品は6本。なんと1年間で3本映画を作ってきました。

 

作品を解説する前に、キム・ギドク自身についてお話ししましょう。

 

 

鬼才という言葉がこれほどふさわしい監督はいない

 

キム・ギドクさんは、韓国生まれで現在55歳です。

 

貧困の家庭に生まれ、大学には行かずに20歳で海兵隊に入隊。

そして1990年、パリで絵画の勉強のため留学します。

留学先で映画にハマり、映画監督としての道を歩み始めるのです。

 

なんと彼が初めて映画を観たのは、30歳に成ってからだと言われています。

 

 

どんな人でも、幼少期の頃にはどんな映画であれ、一つや二つは観るものですよね。

キム・ギドクさんの場合は、それが30歳だったのです。

 

ちなみに初めて見た映画は「羊たちの沈黙」らしいです。

 

レクター博士の過激な行動と、キムギドクの作品ってなんだか共通点があるような、気がします。

 

彼の作品の特徴は「痛み」

 

 

 

過激な描写とも言えますが、銃や爆弾で殺すのではなく、徹底的に人を痛めつけることが多いです。

しかし、単なる暴力映画にはとどまらず、痛みを通して個々の作品のメッセージ性が伝わってくる仕組みになっています。

 

 

久しぶりに秀逸な邦題タイトル!に興奮

 

配給はU-PICCさん。ホームページを調べてみたんですが、中国・台湾・韓国映画が多めの配給会社みたいです。

 

原題は「One on One」 一対一という意味です。

しかし日本の場合は、ミンジュが殺された、という意味になってます。

 

 

実はこの映画には、韓国民主主義の崩壊が込められています。もういろんなニュースで報道されているのでネタバレしても良いと思いますけど。

 

邦題の「ミンジュ」とは、映画冒頭で殺される少女の名前です。

 

民主主義の「みんしゅ」と「ミンジュ」をかけたんです。

 

中国語なら漢字になるし、英語ならアルファベットしか表現方法がありません。

 

日本語ならではのカタカナ表記でメッセージを密かに込めてくれたことに、心から感謝です。普段なら邦題タイトルにケチつけてばっかなのですが、こればっかりは例外。

 

U-Picc、要チェックですね!!

 

 

 

どう考えてもおかしいキャスティング

 

話のプロットは非常に簡単です。

 

・一人の少女が謎の7人組の集団によって殺害される。

・翌年に実行犯が次々と拉致監禁の被害に遭う。復讐団のメンバーも7人

・復讐団の目的は何なのか? そして結末は?

 

 

一人の少女が殺されてから、その犯人達に復讐していく話です。

 

ここで、おかしいのがキム・ヨンミンという一人の俳優

 

公式ホームページを見てみましょう。

 

 

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何とこの人は容疑者の役以外に7人もこなしています。

 

こんなの聞いたことがありません。

 

 

何故彼一人に押し付ける必要があったのでしょうか。

 

 

 

イーストウッドもビックリ。驚異の早撮り

 

キム・ギドクはこの映画の監督・脚本・制作・そして撮影を務めています。

何故なら「早くて安く済むから」

 

巨匠の言葉とは思えない発言です。

 

早さを重視した結果、何と10日間ですべての撮影を撮り終えたそうです。

 

10日ですよ!! 10日で名高い国際映画祭に出展できるだけの作品に仕上げたのです。

 

超過密スケジュールで撮影を続けた結果、今回主演と思われる復讐団のリーダー、マ・ドンソクさんは、ほとんど睡眠時間がなかったんだそう。

 

もう恐ろしいですよね、キム・ギドクは。メイキングフィルムを是非とも見てみたいもんです。

 

そんな超絶スピードで撮影した結果、明らかにカメラのミスと思えるシーンが何個も出てきます。

もしかしてスマホで撮ったんじゃねぇか、と感じるくらい、撮影の完成度としては低いものとなっております。

 

でも不思議なもんです。撮影の完成度と、作品の完成度って比例しないんです。

 

 

映画の感想

 

新年早々、とんでもないものを見てしまいました。

 

鑑賞後、気付いたらパンフレットを買って、その場で全部読んでしまいました。とにかくこの映画について知りたい、知識欲を高められました。

 

繰り返される拷問のシーンは、確かに痛い。痛々しすぎるほどに。

 

しかし、徐々に復讐団に内紛が起こり、拷問のレベルが下がっていきます。

最初がキツイですね。

 

そして、R-18の理由が明らかになりますが、こんなことだったのか。とちょっと呆れてしまう部分もありました。

こういう映画こそ、高校生に見せるべきなのに。

 

犯人に復讐していくだけの話だと思っていたのですが、この映画はとんでもないメタファーが隠されていました。

 

それは「自分が何者であるか?」というメッセージ。

この映画を見て何を思った? 何が善と悪なのか?

 

単に犯人に復讐する映画ではありません。

 

少女を殺害した犯人側が権力者だとすれば、復讐団のメンバーは権力者に従い、馬鹿にされている奴らなんです。

復讐団のメンバーはフリーター、ニート、アルバイト、ウェイトレス。社会の立場的にはとても弱い人達ばかりです。

 

つまり、少女殺害の復讐を通して、民主主義とは名ばかりの「権力主義・全体主義」化している韓国に、強烈なメスを突き刺したのです。

 

かといって、キム・ギドクは社会主義者でもありません。韓国の民主主義の崩壊を通して、自分が社会の中でどういう位置にいるか、日々働いている意味や生きる意味を改めて問いているのです。

 

 

 

※以下はネタバレになるのでまだ見てない人は気をつけてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

復讐団は、実行犯の上の上の上の・・・はたまた上の、韓国政府の情報部の長官を捕まえて拷問します。

復讐団のリーダーは、自分の妹が殺されたから、怒りに狂って復讐を繰り返しているのです。

 

犯罪を犯した者には罰を、指令を下したリーダーなら、なぜ妹が殺されたか、動機はわかるはずです。

しかし長官は「俺は知らない、上に命令されただけだ」と言います。

 

結局、妹を殺された動機がわからずじまいになってしまい、観客はとてもモヤモヤした気分になります。「仕方がなかった」「しょうがない」と犯人達はつぶやきますけどね。

 

 

結局、復讐しても何の解決にもならないんですよ、この映画。

 

勧善懲悪にはせずに、事件の解決もしてくれない、何と不完全燃焼な映画なんです。

 

それでも私がこうやってブログに書き続けているのは、この映画から何かとてつもないメッセージを受け取ったからだと思うのです。

 

「自分は何者か?」メッセージが流れて映画は終わります。

 

もし自分が映画の中にいて、上から少女を殺害しろと言われたら、はっきり断れるでしょうか? 北朝鮮のように、家族を人質にされていたら? 自分が殺されるのだったら?

 

 

キム・ギドク作品は、ハッピーエンディングではないですが、何かに取り憑かれたような感覚に陥ってしまいますね。

 

ぜひ劇場でチェックしてください!

 

超超おすすめです!!!!!

 

 

 

 

というわけで、非常にオススメです!!

 

 

 

 

 

 

 

 

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